コラム

【2026年最新版】2026年の年末調整 押さえておきたい変更ポイントと実務スケジュール

年末調整は、給与計算業務のなかでも特に複雑で、限られた期間に膨大なタスクをこなさなければならない重要業務です。そして2026年(令和8年)の年末調整は、例年以上に大きな改正への対応が求められます。

令和8年度税制改正により、所得税がかからない給与収入のライン、いわゆる「年収の壁」が昨年の160万円から178万円へと引き上げられ、基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件が一斉に見直されました。しかも今回の改正は、11月までの毎月の給与計算には反映されず、12月の年末調整でまとめて精算するという、これまでにない形をとります。

本記事では、2026年の年末調整で押さえておくべき変更点と実務スケジュールを、給与・社会保険の実務担当者の目線で、専門用語の解説を交えながらわかりやすく整理します。

2026年(令和8年)改正:まずはここだけ押さえる!2026年の主な変更点

  • 所得税がかからない年収の目安「年収の壁」が「160万円 → 178万円」に
    基礎控除が最大104万円(改正前95万円)、給与所得控除の最低保障額が74万円(改正前65万円)に引き上げられました。
    これにより、給与収入のみの場合、所得税がかからない年収の目安は178万円となります。
  • 扶養親族等の所得要件が「合計所得58万円以下」→「62万円以下」に
    給与収入のみの場合、123万円以下 → 136万円以下が扶養の判定ラインになります。これまで対象外だった家族が新たに扶養の対象となる可能性があります。
  • 23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例が初適用
    一般生命保険料控除(新契約)の適用限度額が4万円 → 6万円に引き上げられます。保険料控除申告書に記載欄が新設されました。
  • 【重要】1月~11月まで毎月の給与計算は変わらない。12月の年末調整で一気に精算
    改正は2026年12月1日から適用されるため、1〜11月の給与は従来どおり源泉徴収します。そして、12月の年末調整で改正後の控除額を反映して年間の所得税を再計算します。例年より還付額が大きくなる従業員が多くなる見込みです。

目次

1. 年末調整とは?

会社などの給与支払者は、従業員に給与を支払う際に所得税を源泉徴収しています。しかし、1年間に源泉徴収した所得税の合計額が、必ずしもその年に納めるべき税額と一致するわけではありません。源泉徴収された所得税は、あくまで概算だからです。

そこで、1年間に源泉徴収した所得税と本来納めるべき所得税を一致させる手続きが必要になります。これが「年末調整」です。あらためて所得税を計算し直して正しい税額を確定させ、源泉徴収した所得税に過払いがあれば還付し、不足があれば徴収します。

用語解説:源泉徴収税額表は「仮の計算」

毎月の給与から差し引く所得税は、「源泉徴収税額表」に社会保険料控除後の給与額と扶養親族等の数を当てはめて求めます。この段階では、生命保険料控除や住宅ローン控除、賞与の変動、年の途中の扶養の増減などは反映されていません。
つまり毎月の源泉徴収はあくまで概算であり、それを1年分まとめて正しい税額に直す作業が年末調整です。「なぜ毎月きちんと引いているのに、年末にまた計算するのか」と従業員から聞かれたときは、この点を説明するとスムーズです。

年末調整の対象になる人・ならない人

年末調整の対象となるのは、原則として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している方(甲欄適用者)のうち、その年の12月に給与の支払を受ける方です。

実務ポイント:対象外になる人の見極め

  • その年の給与収入が2,000万円を超える方 → 年末調整の対象外。確定申告が必要です。
  • 扶養控除等申告書を提出していない方(乙欄・丙欄適用者、他社がメインの兼業者) → 対象外です。
  • 年の途中で退職し、12月に給与の支払がない方 → 原則として対象外。確定申告で精算します。
  • 死亡による退職、著しい心身障害による退職、12月分の給与を受けたあとに退職した方などは、退職時に年末調整を行います。

2026年は12月の年末調整で改正後の控除が反映されるため、対象外となった方は「年末調整では減税の恩恵を受けられない」ことになります。中途退職者からの問い合わせが想定されますので、「確定申告をすれば改正後の控除が適用される」旨を案内できるようにしておきましょう。

年末調整の概要や基本的な流れについては、以下のバックナンバーもあわせてご参照ください。

バックナンバー|
年末調整とは?確定申告との違いや対象になる人、手続きの流れを解説
【2025年最新版】年末調整の流れとスケジュールまとめ

2. 2026年の年末調整はどう変わる?

2026年(令和8年分)の年末調整で押さえておきたいポイントは、次の5つです。

  • 基礎控除の引上げ(最大104万円)
  • 給与所得控除の最低保障額の引上げ(74万円)
  • 扶養親族等の所得要件の見直し(合計所得金額62万円以下へ)
  • 生命保険料控除の特例(23歳未満の扶養親族がいる場合)
  • 年末調整関係書類(申告書様式)の変更

① 基礎控除の引上げ(最大104万円)

基礎控除は「本則」と「特例加算」の2階建てで引き上げられました。本則部分が58万円から62万円になり、これに合計所得金額に応じた特例加算が上乗せされます。令和8年分の基礎控除額は次のとおりです。

合計所得金額 収入が給与だけの場合の収入金額 令和8年分の基礎控除額 (参考)改正前
132万円以下 206万円以下 104万円 95万円
132万円超336万円以下 206万円超475万1,999円以下 104万円 88万円
336万円超489万円以下 475万1,999円超665万5,556円以下 104万円 68万円
489万円超655万円以下 665万5,556円超850万円以下 67万円 63万円
655万円超2,350万円以下 850万円超2,545万円以下 62万円 58万円

※合計所得金額2,350万円超の方の基礎控除額に改正はありません。
※給与収入金額は、改正後の給与所得控除額に基づいた金額です。

なお、上記の加算措置のうち一部には適用期間が定められているため、令和10年分以後の取扱いにも注意が必要です。

用語解説:「合計所得金額」と「給与収入」は別物です

実務でもっとも間違いが多いのがここです。

  • 給与収入……源泉徴収票の「支払金額」。額面の年収のことです。
  • 給与所得……給与収入から給与所得控除を差し引いた金額。
  • 合計所得金額……給与所得に、他の所得(不動産所得、雑所得など)を合計した金額。給与だけの方は「給与所得=合計所得金額」になります。

基礎控除の表も、扶養親族等の所得要件も、判定に使うのは「合計所得金額」です。従業員が申告書に書く「所得の見積額」も、年収の額面ではなく合計所得金額を書く欄です。ここに額面年収を書いてしまう記入ミスが毎年発生しますので、記入例で明確に示しておきましょう。

② 給与所得控除の最低保障額の引上げ(74万円)

給与所得控除の最低保障額が、65万円から74万円に引き上げられました。給与等の収入金額が220万円以下の方が対象となります。これにともない、年末調整で使用する「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」も改正されています。

この2つの引上げにより、所得税がかからない給与収入の目安は、いわゆる「178万円の壁」へと変わります。

用語解説:「178万円の壁」の中身

178万円 = 給与所得控除の最低保障額74万円 + 基礎控除104万円

給与収入178万円までなら、課税所得がゼロになるため所得税がかかりません(社会保険料控除などを考慮すれば、さらに余裕が生まれます)。
2024年まで103万円、2025年は160万円だったラインが、2026年は178万円になったという流れです。パート・アルバイトの就業調整の相談が増える時期ですので、社内での周知資料を用意しておくと安心です。

③ 扶養親族等の所得要件の見直し

基礎控除額の引上げにともない、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件も、それぞれ引き上げられました。

扶養親族等の区分 改正後の所得要件(給与収入) (参考)改正前
扶養親族/同一生計配偶者/ひとり親の生計を一にする子 62万円以下(136万円以下) 58万円以下(123万円以下)
特定親族 62万円超123万円以下(136万円超197万円以下) 58万円超123万円以下(123万円超188万円以下)
配偶者特別控除の対象配偶者 62万円超133万円以下(136万円超207万円以下) 58万円超133万円以下(123万円超201万5,999円以下)
勤労学生 89万円以下(163万円以下) 85万円以下(150万円以下)

※合計所得金額2,350万円超の方の基礎控除額に改正はありません。
※給与収入金額は、改正後の給与所得控除額に基づいた金額です。

実務ポイント:【見落とし注意】改正で新たに扶養対象となる家族をチェック

今回の改正は、令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されます。
注意したいのは、改正によって新たに扶養・控除の対象となる家族がいる場合、「扶養控除等(異動)申告書」等の追加提出が必要になることです。
たとえば、次のようなケースが対象となる可能性があります。

  • 給与収入123万円超~136万円以下の配偶者・子・親 → 扶養親族・同一生計配偶者
  • 給与収入150万円超~163万円以下の学生アルバイト → 勤労学生控除
  • 給与収入188万円超~197万円以下の19歳以上23歳未満の子 → 特定親族特別控除

ポイントは、家族の年収が昨年と同じでも、改正によって今年から対象になる場合があることです。
年末調整の案内時にはこの点を従業員へ周知し、該当する場合は申告書を追加で提出してもらえるよう準備しておきましょう。

実務ポイント:所得税の扶養と社会保険の扶養は「別基準」です

給与・社保を兼務している担当者ほど混同しやすいポイントです。所得税の扶養(136万円)と社会保険の被扶養者の収入要件(原則年収130万円未満)と、短時間労働者に対する被用者保険の加入要件は別の基準です。なお、いわゆる「106万円の壁」とされてきた月額8.8万円以上の賃金要件は、2026年10月に撤廃される予定です。短時間労働者については、週の所定労働時間20時間以上などの加入要件を確認する必要があります。

「178万円まで税金がかからないと聞いたので、そこまで働きます」という従業員に対して、社会保険の扶養から外れる可能性や、勤務先での被用者保険の加入義務が生じる可能性をあわせて説明できるようにしておくと、後のトラブルを防げます。

所得税は年収ベース(1〜12月の確定額)、社会保険は「今後1年間の見込み」で判定するという時間軸の違いも、説明の際のポイントです。

用語解説:特定親族特別控除と「源泉控除対象親族」

特定親族特別控除とは、19歳以上23歳未満の親族(大学生年代の子など)に一定の所得がある場合でも、その所得金額に応じて段階的に控除を受けられる制度です。令和7年分から新たに設けられました。
また、令和8年分から、扶養控除等申告書では「控除対象扶養親族」に代わり、「源泉控除対象親族」という区分が設けられています。

源泉控除対象親族には、通常の控除対象扶養親族に加えて、特定親族のうち合計所得金額が100万円以下の方も含まれます。そのため、この範囲の特定親族については、毎月の給与から所得税を源泉徴収する際にも扶養親族等として考慮されます。

一方、合計所得金額が100万円を超え123万円以下の特定親族は、特定親族特別控除の対象ではありますが、源泉控除対象親族には含まれません。そのため、毎月の源泉徴収では考慮せず、年末調整の際に「特定親族特別控除申告書」を提出することで控除を受けることになります。

・「100万円」と「123万円」の違い
「123万円」は特定親族特別控除の対象となる所得金額の上限、「100万円」は毎月の源泉徴収でも扶養親族等として考慮するかどうかの境目、と整理すると分かりやすいでしょう。

④ 生命保険料控除の特例(23歳未満の扶養親族がいる場合)

こちらは令和7年度税制改正で決まった内容ですが、適用が令和8年分からとなるため、2026年の年末調整で初めて適用される点に注意が必要です。

23歳未満の扶養親族がいる居住者について、新生命保険料(平成24年1月1日以後に締結した契約に係るもの)に係る一般生命保険料控除の適用限度額が、4万円から6万円に引き上げられました。控除額の計算は次のとおりです。

年間の新生命保険料 控除額
30,000円以下 新生命保険料の全額
30,000円超60,000円以下 新生命保険料 × 1/2 + 15,000円
60,000円超120,000円以下 新生命保険料 × 1/4 + 30,000円
120,000円超 一律60,000円
  • 旧生命保険料(平成23年12月31日以前の契約)は対象外です。
  • 一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の合計適用限度額は12万円で、改正前と変わりません。

※この特例の適用期限は、令和8年度税制改正により令和9年分まで延長されました。

実務ポイント:共働き世帯は「夫婦どちらも」適用できます

通常の扶養控除は、1人の子について夫婦のどちらか一方しか適用できません。しかしこの生命保険料控除の特例は、生計を一にする23歳未満の親族がいれば、その子を扶養控除の対象にしているかどうかにかかわらず適用できます。

たとえば、妻が23歳未満の子を扶養控除の対象にしている共働き世帯でも、夫はその子について本特例(限度額6万円)を適用できます。

「うちの子は妻の扶養に入れているので、私は対象外ですよね?」という問い合わせが想定されます。扶養控除とは判定の考え方が違うことを、あらかじめ案内文に入れておくと問い合わせを減らせます。

⑤ 年末調整関係書類(申告書様式)の変更

国税庁は、令和8年6月30日に令和8年分の年末調整のための各種様式を公表しています。今回、内容が変更されたのは次の2つです。

  • 令和8年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書……「控除額の計算」の表および「判定」欄が、改正後の金額に修正されています。
  • 令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書……「生命保険料控除」欄に、23歳未満の扶養親族の有無と、該当する扶養親族の情報(氏名・個人番号・住所・生年月日・続柄・合計所得金額の見積額)を記載する欄が新設されています。

その他の書類については、大きなレイアウト変更や欄の追加は行われていません。

実務ポイント:使い回している社内資料は要チェック

毎年同じ記入例・マニュアルを使い回している場合、金額基準がすべて古いままになります。特に次の3点は必ず更新しましょう。

  • 記入例の「所得の見積額」欄の金額例(新しい判定ラインに合わせる)
  • 基礎控除申告書の「控除額の計算」表の見方の説明
  • 保険料控除申告書の新設欄(23歳未満の扶養親族)の記入方法

書類の配布は10月下旬~11月上旬が一般的です。逆算すると、10月中には新様式に対応した記入例と説明資料を完成させておく必要があります。

3. 2026年の最大の実務ポイントは「12月にまとめて精算」

今回の改正は、原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。

ここで実務担当者が特に注意したいのが、1月から11月までの給与計算では新しい控除額を反映せず、12月の年末調整でまとめて反映するという点です。

  • 1月~11月の給与計算
    毎月の給与等から差し引く所得税の計算方法に変更はありません。これまでどおり、改正前の令和8年分源泉徴収税額表を使用して源泉徴収を行います。
  • 12月の年末調整
    引上げ後の基礎控除額や、改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って、令和8年分の正しい所得税額を計算します。そのうえで、1月からすでに源泉徴収してきた所得税額と比較し、差額を精算します。

基礎控除や給与所得控除が引き上げられることで、年末調整後の所得税額が、それまで源泉徴収してきた税額より少なくなる方もいます。そのため、2026年は例年より年末調整による還付額が大きくなる従業員が増えることが見込まれます

実務担当者のポイント

「12月から毎月の所得税が単純に安くなる」ということではなく、1~11月分も含めた1年間の税額を12月の年末調整で再計算し、その差額を精算すると考えると分かりやすいでしょう。

【計算例1】給与収入500万円・社会保険料75万円・扶養親族なしの場合

  • 給与所得金額:500万円 ÷ 4 × 3.2 - 44万円 = 356万円
  • 基礎控除額:合計所得金額356万円の場合、令和8年分の基礎控除額は 104万円 です。
  • 課税給与所得金額:356万円 - 社会保険料75万円 - 基礎控除104万円 = 177万円
  • 所得税額:177万円 × 5% = 88,500円
  • 年調年税額:88,500円 × 102.1% = 90,358円 → 90,300円(100円未満切捨て)

【参考:改正前の基礎控除額68万円で計算した場合】

356万円 - 75万円 - 68万円 = 213万円
213万円 × 10% - 97,500円 = 115,500円
115,500円 × 102.1% → 117,900円

この例では、基礎控除の引上げにより、年税額は117,900円から90,300円となり、27,600円少なくなる計算です
※実際の年末調整による還付・徴収額は、年間の源泉徴収税額やその他の所得控除等によって異なります。

【計算例2】パート従業員・給与収入170万円の場合

  • 給与所得金額:170万円 - 給与所得控除74万円 = 96万円
  • 基礎控除額:合計所得金額96万円の場合、令和8年分の基礎控除額は 104万円 です。
  • 課税給与所得金額:96万円 - 基礎控除104万円 < 0 → 所得税は0円

【参考:改正前の基準で計算した場合】

給与所得105万円 - 基礎控除95万円 = 10万円

この例では、改正後は給与所得金額より基礎控除額の方が大きくなるため、所得税はかかりません
そのため、1~11月の給与で所得税が源泉徴収されている場合には、年末調整で還付されるケースが想定されます
※実際の還付額は、年間の源泉徴収税額やその他の所得控除等によって異なります。

実務ポイント:手計算はもう現実的ではありません

令和8年・令和9年は、所得金額に応じて控除額が細かく変わるため、手計算や自作のExcelでは計算ミスが起こりやすくなります
給与計算ソフトを利用している場合は、令和8年度税制改正への対応時期やアップデート方法を早めに確認しておきましょう。
ソフトの対応が年末調整直前になる可能性もあるため、9月ごろまでに提供時期を確認し、アップデート後のテスト・検証期間を確保しておくことが重要です

用語解説:年調所得税額と年調年税額

年末調整では、「年調所得税額」と「年調年税額」という似た言葉が出てきます。

  • 年調所得税額
    その年の所得税額から、住宅ローン控除などを差し引いたあとの税額です。
  • 年調年税額
    年調所得税額に復興特別所得税(2.1%)を加えた最終的な年間税額です。100円未満は切り捨てます。

実際の年末調整では、この「年調年税額」と1年間に給与・賞与から源泉徴収した所得税額を比較し、差額を還付または追加徴収します。
なお、2026年もこの計算方法に変更はなく、年調所得税額 × 102.1%で計算します。

4. 2026年 年末調整の実務スケジュール

年末調整は「準備」「書類配布・回収」「計算」「還付・徴収」「法定調書提出」の5つのステップに分かれます。2026年ならではの注意点とあわせて、時期ごとに整理しました。

時期 主なタスク 2026年ならではの注意点
9月 改正内容の確認/対象者の洗い出し/給与ソフトの対応時期を確認 パート勤務者や扶養家族、19~22歳の子がいる従業員など、改正の影響を受けそうな人を早めに確認
10月 申告書・記入例の準備/提出期限を社内へ案内 新様式に合わせて記入例や案内資料を更新。「所得の見積額」の記入方法も分かりやすく案内
10月下旬~11月中旬 申告書の配布・回収/未提出者への督促/令和9年分の扶養控除等申告書を回収 改正により新たに扶養・控除の対象となる家族がいないか確認を呼びかける
11月下旬〜12月上旬 給与ソフトへ入力/控除額・年税額を計算/還付・追徴額を確認 改正後の控除額が正しく反映されているか数名分を検算。還付総額も経理と共有
12月給与(賞与)支給時 年末調整の還付・追加徴収/給与明細へ反映 還付額が例年より増える可能性があるため、従業員向けFAQなどを準備
12月〜翌年1月 源泉徴収簿の整理/源泉所得税の納付 還付額を納付税額から差し引ききれない場合の対応を事前に確認
翌年1月 源泉徴収票の交付/法定調書・給与支払報告書の提出 1月末の提出期限に間に合うよう、早めに最終チェック
実務ポイント:【早めの回収がカギ】申告書は11月中旬までを目標に

2026年は税制改正への対応や確認作業が増えるため、例年より年末調整に時間がかかる可能性があります。
申告書の回収が遅れると、その後の入力・計算・チェックにも影響するため、できるだけ11月中旬までに全員分を回収できるよう、早めに提出期限を設定しておきましょう。
また、提出期限は実際の最終期限より1週間ほど早い「社内締切」を設定しておくと、未提出者への督促や不備の修正にも余裕を持って対応できます。

5. 実務上よくある問い合わせと対応

Q1. 「178万円まで税金がかからない」なら、社会保険の扶養も178万円まで大丈夫?

いいえ。所得税と社会保険では基準が異なります。
178万円は、一定の場合に本人の所得税がかからない目安であり、扶養の基準ではありません。
所得税の扶養、社会保険の扶養(原則130万円未満)、短時間労働者本人の社会保険加入要件は、それぞれ別に判定します。

Q2. 昨年末に提出した令和8年分の申告書で、扶養に入れなかった家族がいます。今回の改正で対象になった場合は?

改正によって新たに扶養等の要件を満たす場合は、「扶養控除等(異動)申告書」等を追加で提出してもらいます。
年末調整の案内時に、「今回の改正で新たに対象となる家族がいないか」を従業員へ確認してもらうと、申告漏れを防げます。

Q3. 年の途中で退職した従業員から「減税分はどうなるのか」と聞かれました。

12月に給与の支払がない中途退職者は、原則として年末調整の対象外です。ご本人が確定申告を行うことで、改正後の控除額により精算されます。退職時の説明資料に一文を加えておくと、後日の問い合わせを減らせます。

Q4. 「所得の見積額」と実際の所得に差が出たら?

翌年1月末日までに給与の支払者が源泉徴収票を交付するまでの間であれば、年末調整のやり直しが可能です。それ以降に判明した場合は、従業員本人が確定申告で精算することになります。特に2026年は見積額のズレが控除額に大きく影響するため、12月給与確定後の再確認を工程に入れておきましょう。

Q5. 給与収入が2,000万円を超える役員はどうなりますか?

年末調整の対象外となり、確定申告が必要です。改正後の基礎控除額も確定申告で適用されます。ただし合計所得金額2,350万円超の方は基礎控除額に改正がない点もあわせて確認しておきましょう。

Q6. 23歳未満の子を配偶者の扶養に入れています。生命保険料控除の特例は使えませんか?

使えます。扶養控除と異なり、生計を一にする23歳未満の親族がいれば夫婦それぞれが適用を受けられます(詳しくは「④生命保険料控除の特例」をご参照ください)。

Q7. 住民税はいつ変わりますか?

年末調整の結果は、翌年1月に提出する給与支払報告書を通じて市区町村に伝わり、令和9年度分(2027年6月〜2028年5月に徴収)の住民税に反映されます。「12月に所得税は減ったのに、住民税が減るのは来年の6月から」という時間差について、従業員から質問を受けやすい点です。

6. あわせて確認しておきたい改正

通勤手当の非課税限度額の改正

令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について、①片道65km以上の区分が新設され非課税限度額が引き上げられたほか、②一定の要件を満たす駐車場等を利用しその料金を負担している場合に、通勤距離の区分に応じた非課税限度額へ1か月当たりの駐車場代相当額(上限5,000円)を加算する措置が創設されました。

通勤距離(片道) 改正後の非課税限度額(月額) 改正前
55km以上65km未満 38,700円(据置き) 38,700円
65km以上75km未満 45,700円 38,700円
75km以上85km未満 52,700円 38,700円
85km以上95km未満 59,600円 38,700円
95km以上 66,400円 38,700円

年末調整事務に直接の影響はありませんが、月次の給与計算で改正後の非課税枠が正しく反映されていることが前提となります。4月以降の処理に漏れがないか、年末調整前に確認しておきましょう。

食事の現物支給等に係る非課税限度額

  • 使用者からの食事の現物支給に係る非課税限度額……月額3,500円 → 月額7,500円
  • 深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭……1回300円以下 → 1回650円以下

※いずれも令和8年4月1日以後に支給する食事等について適用されます。

住宅ローン控除

住宅借入金等特別控除について、既存住宅のうち認定住宅・ZEH水準省エネ住宅に係る借入限度額の引上げ、子育て世帯への上乗せ措置の対象拡充、床面積要件の緩和等の見直しが行われたうえで、適用期限が令和12年12月31日まで5年延長されました。年末調整では、税務署から従業員本人に交付された「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」の記載内容に基づいて控除額を計算します。

2027年(令和9年分)に向けて

  • ひとり親控除の控除額が35万円から38万円に引き上げられます(令和9年分以後)。令和8年分は所得要件の緩和のみで、控除額は35万円のままである点にご注意ください。
  • 防衛特別所得税が創設され、令和9年1月1日以後に生ずる所得から、源泉徴収すべき所得税額の1%相当額を併せて徴収します。同時に復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられるため、合計税率2.1%に変更はなく、計算方法自体は変わりません。
  • 令和9年分の源泉徴収税額表は、令和8年8月末頃に国税庁ホームページに掲載される予定です。年明けの給与計算に向けて、早めに入手・設定しておきましょう。

7. 2026年 年末調整|実務で押さえておきたいチェックリスト

準備(9月〜10月)

  • □ 給与計算ソフトの改正対応・アップデート時期を確認した
  • □ 年末調整の対象者・対象外者を確認した
  • □ 令和8年度税制改正の内容を確認・共有した
  • □ 新様式に合わせて申告書・記入例・案内資料を準備した

配布・回収(10月下旬~11月)

  • □ 申告書を配布し、提出期限を案内した
  • □ 改正により新たに扶養・控除の対象となる家族がいないか案内した
  • □ 必要な申告書・控除証明書を回収した
  • □ 令和9年分の扶養控除等申告書を回収した

計算・精算(11月下旬〜12月)

  • □ 「所得の見積額」の記入内容を確認した(額面年収との取り違えがないか)
  • □ 改正後の控除額が給与ソフトに正しく反映されているか検算した
  • □ 年末調整の還付・追加徴収額を確認した

年明けの対応(翌1月)

  • □ 源泉徴収票を交付した(1月31日まで)
  • □ 法定調書合計表を作成・提出した(法定期限1月31日)
    *令和8年分の実際の提出期限は、翌開庁日の2027年2月1日(月)です。
  • □ 給与支払報告書を各市区町村へ提出した(法定期限1月31日)
    *令和8年分の実際の提出期限は、翌開庁日の2027年2月1日(月)です。
  • □ 令和9年分の源泉徴収税額表が給与システムに反映されているか確認した

8. 給与アウトソーシングの活用

年末調整は、締切厳守が求められるうえにタスク量が多く、さらに毎年の制度改正へのキャッチアップが欠かせない業務です。2026年は特に、次のような課題を感じていらっしゃる企業が多いのではないでしょうか。

  • 階段状の特例計算が複雑で、自社の計算が合っているか不安である
  • 新たに扶養に該当する従業員の洗い出しに手が回らない
  • 給与計算ソフトの改正対応と検証に割く時間がない
  • 還付額が増えることによる問い合わせ対応に時間を取られそうである
  • 担当者が1名しかおらず、繁忙期の属人化・遅延リスクが高い
実務ポイント:当社サービスのメリット

当社の給与計算アウトソーシングサービスをご利用いただくことで、年末調整にかかる担当者の負担を軽減しながら、正確かつスムーズな対応が可能になります。

  • 年末調整業務をまとめて対応
    申告書の回収・計算から、還付・追加徴収、源泉徴収票の発行、法定調書作成に必要な給与情報のご提供、給与支払報告書の提出まで対応します。
  • 法改正にも正確に対応
    改正後の控除額や新様式に対応し、ダブルチェックによって計算ミスを防ぎます。
  • 従業員対応の負担を軽減
    年末調整に関する確認や問い合わせ対応など、社内担当者の負担を減らします。
  • 給与担当者の業務負荷を削減
    繁忙期に集中する年末調整業務を外部へ委託することで、本来の業務に時間を充てやすくなります。

中小企業で給与担当者が複数業務を兼務している場合、年末調整をアウトソーシングすることで、業務効率化、計算ミスの排除、従業員満足度の向上を同時に実現できます。

9. まとめ

2026年の年末調整は、控除額の大きな改正が12月に一気に効いてくるという、これまでにない形での対応が求められます。11月まで毎月の給与計算が変わらない分、準備の遅れに気づきにくいことが最大のリスクといえるでしょう。

9月のうちに、次の4点まで進めておくことをおすすめします。

  • 改正内容と、自社の従業員への影響範囲の把握
  • 給与計算ソフトの改正対応バージョン・アップデート時期の確認
  • 従業員への周知資料・記入例の準備(新様式・新基準に対応したもの)
  • 書類の配布・回収から12月給与への反映までのスケジュール確定

近年は育児休業や転職などにより、人事担当者の確保も難しくなってきています。年末調整のように期限が決まっていて、かつ制度改正への継続的なキャッチアップが求められる業務は、社外リソースの活用も有効な選択肢です。

メイソンコンサルタントグループ株式会社では、社会保険労務士や豊富な実務経験を持つスタッフが常に最新の知識で対応し、高品質なサービスを提供しています。年末調整の代行はもちろん、給与計算・賞与計算・住民税など、給与まわりのさまざまなサポートを承っております。

まずはお気軽にご相談ください。人事・給与業務のプロフェッショナルが、貴社の業務を強力にサポートいたします。

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用語ミニ辞典(初心者向け早見表)

用語 意味
年末調整 毎月概算で源泉徴収した所得税と、1年間に納めるべき所得税との差額を年末に精算する手続き。
給与収入 源泉徴収票の「支払金額」。いわゆる額面年収のこと。
給与所得 給与収入から給与所得控除を差し引いた金額。
合計所得金額 給与所得に他の所得を合計した金額。扶養や基礎控除の判定に使う金額はこれ。
所得の見積額 申告書に記入する、その年の合計所得金額の見込み。額面年収を書く欄ではない点に注意。
基礎控除 合計所得金額2,500万円以下の納税者に適用される所得控除。令和8年分は合計所得金額に応じて控除額が異なる。
給与所得控除 給与所得者の必要経費にあたる控除。令和8年分の最低保障額は74万円。
同一生計配偶者 生計を一にする配偶者で、合計所得金額が62万円以下(令和8年分)の方。
特定親族 19歳以上23歳未満で、合計所得金額が62万円超123万円以下(令和8年分)の親族。
源泉控除対象親族 控除対象扶養親族に、特定親族のうち合計所得金額100万円以下の方を加えたもの。令和8年分から扶養控除等申告書に記載。
年調所得税額 住宅ローン控除を差し引いたあとの、その年の所得税額。
年調年税額 年調所得税額に102.1%を乗じた最終的な税額(百円未満切捨て)。
法定調書合計表 源泉徴収票などの法定調書をまとめて税務署へ提出する様式。翌年1月31日まで。
給与支払報告書 住民税の計算のため市区町村へ提出する書類。翌年1月31日まで。

10. 参考・出典
・国税庁│令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし
・国税庁│令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
・国税庁│年末調整がよくわかるページ/各種申告書・記載例
・国税庁│変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供)
・国税庁│通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A
・財務省│令和8年度税制改正の大綱

※本記事は2026年8月時点で公表されている情報に基づいて作成しています。公開時点の最新情報を国税庁ホームページ等でご確認ください。

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