コラム

月額変更届とは? 作成や提出について解説

月額変更届とは、固定賃金が大きく変動したときなどに提出する書類です。どのようなときに提出が必要になるのか具体的に紹介するので、ぜひ参考にしてください。また、提出することで何が変わるのか、出し忘れたときはどうなるのかについても解説します。

月額変更届は標準報酬月額の変更に必要な書類

昇給などによって報酬の額が大幅に変動した場合、継続した3カ月間の報酬をもとに、4ヶ月目から標準報酬月額の改定が必要になります。この改定のために提出する届出書を「月額変更届」といいます。

従業員の報酬額が大幅に変動したときなどには、日本年金機構の事務センターあるいは管轄の年金事務所に月額変更届を提出することが求められます。健康保険組合に加入している場合は、日本年金機構に加え、加入している健康保険組合にも提出が必要です。
月額変更届を提出することは、従業員の生活を守るためにも必要です。例えば、報酬が著しく下がったにもかかわらず以前の報酬額に基づいた社会保険料を控除していると、従業員が受け取れる手取りが不当に減り、生活が厳しくなるかもしれません。
しかし、月額変更届を用いて適切に報酬額の変更を届け出ていれば、下がった報酬額に基づいた社会保険料が控除されるため、適正な手取りを受け取れるようになります。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、社会保険料を計算する時に必要な数字です。連続する3カ月の報酬の平均額を算出し、特定の区切りに従って区分したものを標準報酬月額と呼びます。
従業員が実際に受ける報酬に基づいて、毎月保険料を計算するのはとても煩雑なため、この標準報酬月額制が取られています。

例えば、東京都の健康保険においては、月の報酬が63,000円未満であれば標準報酬月額は58,000円、報酬が63,000円以上73,000未満であれば標準報酬月額は68,000円です。このように報酬月額を50の段階に分け、それぞれに標準月額を定めています。

なお、報酬月額の対象となる報酬には、基本給だけでなく通勤手当や残業手当などの各種手当も含まれる点に注意が必要です。また、年4回以上の賞与が支給される場合は、賞与額も報酬月額に含まれます。

標準報酬月額によって算出される保険料

標準報酬月額から、次の3つの社会保険料を計算します。

  • 厚生年金保険料
  • 健康保険料
  • 介護保険料

厚生年金保険料は、次の計算式で算出します。

標準報酬月額×18.3%×1/2

標準報酬月額が40万円のケースでシュミレーションしてみましょう。報酬月額40万円の場合、保険料額表より標準報酬月額は41万円です。厚生年金保険料率は18.3%ですが、労使折半となるため従業員が負担する金額はその半分となり、37,515円(41万円×18.3%×1/2)となります。

健康保険料と介護保険料は合算して算出しますが、介護保険第2号被保険者以外は次の計算式で健康保険料のみを求めます。

標準報酬月額×10.00%×1/2

介護保険第2号被保険者は次の計算式で健康保険料と介護保険料の合計額を求めます。

標準報酬月額×11.82%×1/2

なお、介護保険第2号被保険者とは40歳以上64歳以下に該当する方です。健康保険料も介護保険料もいずれも労使折半になるため、従業員が負担する金額は各料率×1/2となります。

(参考)
・全国保険協会 │ 令和5年分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

月額変更届を提出する3つの条件

報酬が変わったときであっても、必ずしも月額変更届を提出しなければならないわけではありません。提出が必要な場合の3つの条件を確認していきます。

  • 1. 固定的賃金が変わったとき
  • 2. 支払基礎日数が17日以上のとき
  • 3. 標準報酬月額に2等級以上の変動があるとき

それぞれの条件について、詳しく解説します。

1. 固定的賃金が変わったとき

月額変更届は、基本給などの固定的な賃金が変わったときに提出します。例えば、基本給は変わらず、時間外労働の手当やインセンティブなどの臨時的な報酬が増えた場合、大幅な増え方であっても月額変更届を提出する必要はありません。

2. 支払基礎日数が17日以上のとき

一時的に報酬が変わっても、その月の支払基礎日数が17日未満のときは該当しません。支払基礎日数とは給与が発生する日数のことです。日給制や時間給制の場合は、出勤日数が支払日数に該当します。

一方、月給制の場合は、欠勤控除があるかどうかで支払基礎日数のカウント方法が異なるので注意が必要です。欠勤控除がある場合は所定労働日数から欠勤日数を差し引いた日数が、支払基礎日数となります。欠勤控除がない場合は暦日数が支払基礎日数となります。

3. 標準報酬月額に2等級以上の差があるとき

支払基礎日数が17日以上あり、なおかつ基本給が変わった場合であっても、標準報酬月額が2等級以上変動しないときは月額変更届を提出する必要はありません。東京都の標準報酬月額(令和5年3月分(4月納付分)から)の一部を紹介します。

等級 標準報酬月額 報酬月額
22 300,000円 290,000円以上310,000円未満
23 320,000円 310,000円以上330,000円未満
24 340,000円 330,000円以上350,000円未満
25 360,000円 350,000円以上370,000円未満
26 380,000円 370,000円以上395,000円未満
27 410,000円 395,000円以上425,000円未満

例えば、基本給を含む報酬月額が32万円(23等級)から34万円(24等級)に変動したとしましょう。標準報酬月額は1等級しか変わっていないため、月額変更届は提出する必要はありません。
しかし、基本給を含む報酬月額が32万円(23等級)から35万円(25等級)に変動したときは、標準報酬月額の等級は2等級変わることになります。その月の支払基礎日数が17日以上であれば、月額変更届を提出しなくてはなりません。

新しい保険料の適用

月額変更届を提出し、新しい保険料は翌月から適用となります。つまり、報酬月額が変動したタイミングから数えると、新しい保険料が適用される時期は4ヶ月目です。
ただし、基本的に当月分の社会保険料は翌月に納付するため、実際に新しい保険料が控除されるのは5ヶ月目となります。

提出方法

月額変更届の提出方法には、電子申請と郵送、窓口申請などがあります。どの方法で提出しても問題ないため、利用しやすく便利な方法を選びましょう。

なお、以下のいずれかに該当があるときは、電子申請が義務付けられているので注意が必要です。

  • 資本金、出資金あるいは銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の金額が1億円を超える法人
  • 相互会社
  • 投資法人
  • 特定目的会社

提出を忘れた場合

月額変更届は条件を満たした場合に「速やか」に提出しなければなりませんが、正当な理由がなく、提出をしなかった場合、懲役や罰金が科せられる場合もあります。

また、年金機構等の行政機関より調査・指摘をされた場合、過去に遡り追加徴収される場合があります。保険料の再計算など、事務担当の手続きも煩雑となり、従業員にも負担がかかることになります。

そうならないためにも、月額変更届はきちんと提出する必要があります。

まとめ

月額変更届を提出することで、適正な社会保険料を計算することができます。従業員の手取りにも関わる重要な書類のため、条件に該当するときは速やかに提出しましょう。

また、月額変更届を正確に提出するためにも、従業員の報酬を正確に管理することが不可欠です。データとして管理するのであれば、報酬月額の計算も簡単になるため、標準報酬月額の変動に速やかに気づくことができ、適切なタイミングで月額変更届を提出できるようになるでしょう。

MASONでは、企業様のご要望に合わせた給与計算アウトソーシングサービスをご提供しています。給与計算をアウトソーシングすることで、月額変更届のタイミングも正確かつ適切に気づくことができるでしょう。ぜひお気軽にご相談ください。

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