法定調書とは?
法定調書とは、「所得税法」「相続税法」「租税特別措置法」「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により税務署への提出が義務付けられている資料をいいます。
税務署は法定調書によってお金の動きを把握し、正しく納税されているか確認します。
法定調書にはどのような種類があるのか、提出期限や提出方法について解説するので、ぜひ参考にしてください。
法定調書の目的
法定調書は何のために利用されているのでしょうか。
法定調書は基本的に管轄の税務署に提出する書類です。例えば、法定調書の一つに支払調書があります。支払調書は報酬を支払ったときに作成します。
税務署は確定申告だけでは、実際に個人が報酬をいくら受け取ったか正確に把握ができません。
例えばある企業が個人事業主Aさんに300万円の報酬を払ったとします。Aさんが確定申告で200万円の申告をしたとすると、支払調書との金額が合いませんので、Aさんが過少に申告している事が分かります。
このように法定調書は、脱税行為を防ぐために活用する大切な書類です。
法定調書の提出期限
法定調書の提出期限は、翌年の1月31日までです。所轄の税務署に提出しましょう。ただし、給与支払報告書・特別徴収税に関しては、市区町村に提出します。
法定調書の種類
法定調書は現行法では60種類もあり、それぞれ以下の4つのカテゴリーに分かれています。
- 所得税法関連
- 相続税法関連
- 租税特別措置法関連
- 国外送金等調書関連
各カテゴリーにどのような法定調書が含まれるのか、詳しく説明します。
所得税法関連
所得税法に関する法定調書は多く、全60種類の法定調書のうち43種類を占めます。主な法定調書を挙げます。
- 給与所得や退職所得の源泉徴収票
- 報酬や契約金の支払調書
- 利子や配当の支払調書
- 生命保険契約の一時金、年金などの支払調書
- 新株予約権の行使に関する調書
- 先物取引に関する調書
- 信託の計算書
所得税法関連の法定調書のうち、ほとんどは源泉徴収票か支払調書に属します。これら2点の法定調書について、詳しく見ていきましょう。
例1: 源泉徴収票
源泉徴収票は、給与などを支払った側が作成し、提出する義務を負う書類です。例えば、給与所得の源泉徴収票であれば、給与を支払う企業や事業主が作成し、次の年の1月末日を期限として税務署に提出します。
(バックナンバー、源泉徴収票の見方)
<提出の範囲>
年末調整をおこなっていて税務署に提出しなければならない場合は以下になります。
- 1. 法人の役員について、その年中の給与等の支払金額が150万円を超えるもの
- 2. 弁護士、司法書士、税理士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの
- 3. 上記1.2.以外の者について、その年中の給与等の支払金額が500万円を超えるもの
給与以外にも退職金などを支払ったときは、源泉徴収票を作成し、適切な提出が必要です。
例2: 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
会社員として給与を受け取るのではなく、フリーランスや原稿料に対して報酬を受取る場合もあります。支払調書は、報酬や料金、契約金、賞金などを支払った側が作成し、提出する義務を負う法定調書です。
<提出の範囲>
- 1. 外交員、集金人、電力量計の検針人およびプロボクサー等の報酬・料金、バー、キャバレー等のホステス等の報酬・料金、広告宣伝のための賞金については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
- 2. 馬主に支払う競馬の賞金については、同一人に対するその年中の1回の支払賞金額が75万円をこえるものの支払を受けた者に係るその年中のすべての支払金額
- 3. プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金については、同一人に対するその年中の支払金額が50,000円を超えるもの
- 4. 弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50,000円をこえるもの
- 5. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
報酬以外にも、例えば利子等の支払調書であれば、利子等の支払いや利益の分配、差益の支払いを担当する側が作成し、次の年の1月末日を期限として税務署に提出します。
不動産等の売買や貸し付けのあっせん手数料を支払ったとき、国外公社債の利子を支払ったときなども、支払調書を作成し、適切な提出が必要です。
なお、支払調書によっては提出期限が1月末日ではないものがあります。例えば、国外投資信託や国外株式の配当等の支払調書については、原則として支払の確定した日、又は支払った日から1カ月以内、1回の支払ごとに支払調書を作成する場合には、支払の確定した日、又は支払った日の翌月末日までに提出しなければならなりません。
相続税法関連
相続税法関連の法定調書は以下の5つです。
- 生命保険金や共済金の受取人別支払調書
- 損害(死亡)保険金や共済金受取人別支払調書
- 退職手当などの受給者別支払調書
- 保険契約者等の異動に関する調書
- 信託に関する受益者別(委託者別)調書
保険金の受取人別支払調書と退職金の受給者別支払調書に関しては、支払った日の翌月15日までに税務署に提出します。
保険契約者等の異動に伴う調書は変更による効力が生じた日の翌年1月末日、信託関連の調書は提出することになった理由が発生した日の翌月末日を期限として提出しましょう。
租税特別措置法関連
租税特別措置法の法定調書は以下の8つです。
- 上場証券投資信託等の償還金等の支払調書
- 特定新株予約権の付与に関する調書
- 特定株式等の異動状況に関する調書
- 特定口座年間取引報告書
- 非課税口座年間取引報告書
- 未成年者口座年間取引報告書
- 教育資金管理契約の終了に関する調書
- 結婚・子育て資金管理契約の終了に関する調書
投資信託などの償還金の支払調書は、支払いが確定した日の翌月末までに提出します。また、教育資金と結婚・子育て資金の管理契約の終了に関する調書はいずれも契約が終わった日の翌々月末が提出期限です。
その他の租税特別措置法関連の法定調書は、次の年の1月末日を期限として提出します。
国外送金等調書法関連
国外送金等調書法関連の法定調書は以下の5つです。
- 国外送金等調書
- 国外証券移管等調書
- 国外電子決済手段移転等調書
- 国外財産調書
- 財産債務調書
国外送金等調書は取引が発生した日の翌月末、国外財産調書と財産債務調書は翌年6月30日、国外証券移管等調書と国外電子決済手段移転等調書は翌月末日までに税務署に提出します。
法定調書の電子申告について
法定調書の種類は多くあり、提出する書類は膨大な数になりますが、光ディスクやクラウドなどで電子提出すれば、コンパクトに提出できます。
使用する紙を減らすことができ、コストを抑えるだけでなく、環境保全にもつながるでしょう。また、税務署に直接出向く、郵送するなどの手間も省けます。
なお、法定調書を紙として提出するか電子提出するかは自由に選択することが可能です。ただし、特定の業者に関しては電子申告が義務付けられています。
電子申告義務化の対象者
60種類の法定調書のうち、前々年度の書類が1つの種類につき100枚を超えるときは、紙ではなく電子申告しなくてはなりません。例えば令和4年に提出した給与所得の源泉徴収票が110枚であれば、令和6年からは電子申告での提出が義務付けられます。
マイナンバーの記載
平成28年度より、法定調書の提出義務者は、金銭等の支払等に係る法定調書に、原則として金銭等の支払を受ける人、及び支払者のマイナンバー、または法人番号の記載が必要となりました。
従業員からマイナンバーの提供を受けられない場合でも、従業員に対してマイナンバーの記載は法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝えて提供を求めて下さい。それでも提供をうけられない場合は記載せず提出することも可能ですが、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、義務違反でないことを明確にしておきましょう。
まとめ
法定調書を作成したときは、すべて期限内に税務署などに提出することが必要です。正しく提出していないときは税務調査が入ることもあるので、各調書の期限を正確に管理し、書類も正確に仕上げて提出するようにしましょう。
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