コラム

産前産後休業・育児休業終了時に必要な手続きとは?2026年版・初めての実務担当者にもわかりやすく解説

従業員が産前産後休業・育児休業から職場復帰するとき、会社側には社会保険や雇用保険に関する複数の手続きが発生します。どれも「本人からの申出待ち」や「期限のあるもの」が多く、担当者がタイミング良く声をかけ、忘れずに進めることが重要です。特に、復帰後の標準報酬月額の改定や年金の「みなし措置」は、従業員の毎月の手取りや将来の年金額に直結します。この記事では、初めて担当する方にもわかるよう、2026年時点で必要な実務対応を順を追って解説します。

職場復帰時に行う手続きの全体像

産休・育休から従業員が復帰するとき、担当者が押さえるべき手続き・確認事項は主に次の4つです。

  • 産前産後休業・育児休業等終了時改定(社会保険料を実態に合わせて下げる手続き)
  • 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(将来の年金額を下げないための手続き)
  • 育児時短就業給付金の案内・申請(2025年新設。時短勤務者への雇用保険の給付)
  • 保険料免除の終了に伴う給与計算の切り替え(徴収再開の設定)

①と②は昔からある手続きですが、③は2025年4月に新設された比較的新しい給付金です。「知らなかったので案内しなかった」ということがないよう、2026年の実務では必ずセットで押さえておきましょう。

前提知識:「標準報酬月額」とは
この記事に何度も登場する「標準報酬月額」とは、社会保険料や将来の年金額を計算するための「給与のランク(等級)」のことです。毎月の給与額そのものではなく、給与をいくつかの区分に当てはめた金額を使って保険料を計算します。

ポイントは、「標準報酬月額は自動的にはすぐ変わらない」ということです。育休から復帰して時短勤務になり給与が下がっても、手続きをしなければ、休業前の高い給与のランクのまま保険料が計算され続けてしまいます。これを実態に合わせるのが、次に説明する「終了時改定」です。

① 産前産後休業・育児休業等終了時改定

何が起きるのか

職場復帰しても、産休・育休取得前と同じように働けるとは限りません。時短勤務にしたり、残業をしないようにしたりすることで、毎月の給与が休業前より下がるケースは少なくありません。このような場合、本人の申出により標準報酬月額を改定(=保険料のもとになるランクを引き下げ)できます。

通常の随時改定(月額変更)は「2等級以上の差」が必要ですが、この終了時改定は「1等級の差」から認められる、育児復帰者のための緩和された仕組みです。

【実務ポイント】

  • 多くの企業で見過ごされやすいのがこの改定申請です。本人からの申告を待つのではなく、給与計算担当者側で復帰者をリストアップし、対象になりそうな人へ積極的に案内しましょう。

改定の対象となる人

次の条件①、②のいずれにも該当した場合に改定の対象となります。

条件 育児休業終了時改定の対象となる人の条件
従前の標準報酬月額と改定後の標準報酬月額に1等級以上の差が生じること。
休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうち、少なくとも1か月の報酬支払基礎日数が17日以上であること

※「報酬支払基礎日数」とは、給与計算の対象となった日数(月給者なら暦日数、日給・時給者なら出勤日数)のことです。

標準報酬月額の改定方法

休業終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬の平均額を計算し、標準報酬月額の等級区分に当てはめます。その結果、現在の標準報酬月額と1等級以上の差があれば、その平均額をもとに標準報酬月額を改定します。なお、支払基礎日数が17日未満の月は平均の計算から除きます。

【計算例】
育児休業終了日:9月15日

従前の標準報酬月額
健康保険220,000円(18等級)、厚生年金保険220,000円(15等級)

支払基礎日数 基本給 合計
9月 10日 102,300円 102,300円
10月 31日 204,600円 204,600円
11月 30日 204,600円 204,600円
511,500円

報酬月額
(204,600円+204,600円) ÷ 2 = 204,600円 (※1)

(※1) 支払基礎日数が17日未満である9月は除いて計算します。この結果、標準報酬月額は200,000円の等級に下がり、毎月の保険料負担が軽くなります。

改定月と適用期間

改定された標準報酬月額は、休業終了日の翌日から起算して2か月を経過した日が属する月の「翌月」から適用されます。上の例(9月15日終了)なら、12月分の保険料から新しい標準報酬月額が適用されるイメージです。

【実務ポイント】

  • この改定は遡って適用されません。改定月を誤ると保険料の取りすぎ・取り漏れが発生するため、給与計算システムの適用開始月の設定と最終確認が必須です。

改定届の提出

産前産後休業終了時改定は「産前産後休業終了時報酬月額変更届」、育児休業等終了時改定は「育児休業等終了時報酬月額変更届」を、日本年金機構(事務センター)等へ提出します。電子申請(e-Gov等)にも対応しています。

【実務ポイント】

  • この改定は「本人の申出があって初めて行う任意の手続き」である点が最大の落とし穴です。申請しない限り標準報酬月額は下がらず、実態より高い保険料が徴収され続けます。
  • 一方で、標準報酬月額が下がると、傷病手当金や出産手当金、将来の年金額の計算基礎も下がります。そのデメリットを打ち消すのが、次の「みなし措置」です。必ず②とセットで案内しましょう。

② 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

何が起きるのか

子どもが3歳になるまでの間、時短勤務などで標準報酬月額が下がった場合でも、「年金額の計算上は、下がる前の高い標準報酬月額で働き続けたものとみなす」という特例です。

かんたんに言えば、「毎月の保険料は下がった給与ベースで安く払い、将来の年金は高い給与ベースで受け取れる」という、従業員にとってメリットしかない制度です(対象は厚生年金の年金額計算のみで、健康保険の給付には影響しません)。

【重要】
この措置は申出をしないと適用されません。申請を忘れると、下がった標準報酬月額のまま年金額が計算されてしまい、従業員にとって大きな損失になります。①の改定とあわせて、必ず案内・申請しましょう。

対象となるケース

3歳未満の子を養育中に標準報酬月額が下がった場合であれば、①の終了時改定を行ったときに限らず対象になります。たとえば次のようなケースです。

  • 育休終了直後はフルタイムで復帰し、その後に時短勤務へ切り替えて標準報酬月額が下がった場合
  • 残業が減ったことにより、毎年の定時決定(算定基礎届)で標準報酬月額が下がった場合

また、男性従業員も対象です。パパ育休の取得や男性の時短勤務が増えている現在、「女性だけの手続き」と思い込まないことが大切です。

申請の方法と必要書類

被保険者からの申出を受け、事業主が「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を管轄の日本年金機構事務センターへ提出します。添付書類は次のとおりです。

  • 戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書(申出者と子の身分関係、子の生年月日を確認)
  • 住民票の写し(同居の確認。マイナンバーの記載により省略できる場合があります)
  • 住民票の除票(出産後に転居した場合のみ必要)

【実務ポイント】

  • 過去の分は2年前まで遡って申出できます。「入社前の前職期間」や「申請漏れが後から見つかった場合」も救済できる可能性があるため、覚えておくと役立ちます。

③ 育児時短就業給付金(2025年4月新設)の案内・申請

2025年4月から、雇用保険に「育児時短就業給付金」が新設されました。2歳未満の子を養育するために時短勤務をする従業員に対し、原則として時短勤務中に支払われた賃金額の10%が支給される給付金です。男女を問わず対象になります。

たとえば時短勤務で月給が20万円になった場合、その10%の月2万円が支給されるイメージです(賃金と給付金の合計が時短開始前の賃金を超えないよう支給率は調整されます)。

申請は原則として事業主経由でハローワークに行います。育休からの復帰面談などの際に、時短勤務を選ぶ従業員へ制度を案内し、必要書類(賃金台帳、出勤簿、育児短時間勤務申出書など)の準備を進めましょう。

【実務ポイント】

  • 「育休給付は知っているが、時短の給付金は知らない」という従業員がまだ多い制度です。復帰時の案内テンプレートに組み込んでおくと漏れを防げます。
  • ①の終了時改定・②のみなし措置・③の給付金は三点セットです。時短勤務で復帰する従業員には、原則すべてが関係すると考えてチェックしましょう。

※なお、子の出生直後に両親がともに14日以上の育休を取得した場合に給付率を13%上乗せする「出生後休業支援給付金」(最大28日・手取り10割相当)も2025年4月に新設されています。こちらは休業中の給付ですが、あわせて押さえておきましょう。

④ 保険料免除の終了と給与計算の切り替え

産休・育休中は、申出により健康保険料・厚生年金保険料が免除されています。復帰後はこの免除が終了するため、給与計算上は保険料の徴収を正しく再開する必要があります。

  • 予定日より早く復帰した場合は、「産前産後休業取得者変更(終了)届」「育児休業等取得者終了届」の提出が必要
  • 免除終了月と徴収再開月(当月徴収か翌月徴収か)をシステムに正しく反映

さらに2026年からの新しい注意点として、2026年4月分の保険料から「子ども・子育て支援金」(2026年度の支援金率は0.23%・労使折半)の徴収が始まっています。この支援金は健康保険料と併せて徴収され、産休・育休中は健康保険料と同様に免除されます。つまり、復帰者の給与計算では健康保険料・厚生年金保険料に加えて支援金の徴収再開も確認対象になります。

【実務ポイント】

  • 免除終了の反映漏れは「保険料の徴収漏れ→後からまとめて控除」という従業員トラブルの典型パターンです。復帰月のチェックリストに必ず入れましょう。
  • 子ども・子育て支援金は給与明細上で健康保険料と区分して表示することが推奨されています。復帰者から「明細の項目が増えた」と質問された際に説明できるよう準備しておきましょう。

2026年時点の実務課題

課題① 手続きの数と「任意申出」の多さ

終了時改定、みなし措置、時短給付金など、復帰時の手続きは本人の申出が起点になるものが多く、会社が案内しなければ漏れてしまいます。担当者の知識と声かけの仕組みがそのまま従業員の利益・不利益に直結します。

課題② 復帰後の働き方の多様化

2025年10月施行の育児・介護休業法改正により、3歳から小学校就学前の子を育てる従業員向けに、テレワークや時差出勤、短時間勤務などの中から柔軟な働き方の措置を講じることが企業に義務付けられました。復帰後の勤務形態はますます多様化しており、給与計算や社会保険手続きの判断が複雑になるケースが増えています。

課題③ 男性の育休取得の一般化

出生後休業支援給付金の創設もあり、男性の育児休業取得は年々増加しています。復帰時手続きも「性別を問わず全員に発生する定常業務」として体制を整えることが求められています。

人手不足・業務効率化への提案

産前産後休業・育児休業終了時の手続きは、給与計算担当者にとって最も複雑で時間を要する業務の一つです。以下のような課題を抱えていませんか?

  • 育児休業終了者のリストアップと改定対象の判定が属人的になっている
  • 書類提出期限を忘れて後から修正するケースが発生している
  • 新設給付金や子ども・子育て支援金など、相次ぐ制度変更のキャッチアップが追いつかない
  • 現在の人数では月次業務に追われ、改定確認まで手が回らない

【当社にお任せください】
当社では、給与計算だけでなく、育児休業に関連する社会保険手続きまで含めた包括的なアウトソーシングサービスをご提供しています。
主なサポート内容は次のとおりです。

  • 育児休業終了改定(育休月変)の対象者判定
  • 育休月変・養育期間標準報酬月額特例・育児時短就業給付金など各種手続き書類の作成支援
  • 給与計算システムへの反映支援
  • 標準報酬月額改定や社会保険手続きの事前チェック

こうした業務を当社に委託することで、給与計算担当者の月次業務負荷を大幅に削減できます。

  • 月次業務の負荷を約40~50%軽減
  • 社会保険手続きや標準報酬月額改定におけるミスを未然に防止
  • 法令改正への迅速な対応
  • 従業員への適切な制度適用による満足度向上

まとめ

産前産後休業・育児休業等終了時の手続きは、従業員の毎月の手取りと将来の年金に直結する重要な業務です。終了時改定もみなし措置も本人の申出が必要な任意の手続きであるため、企業側からの積極的な案内と確認が欠かせません。さらに2025年以降は育児時短就業給付金の新設、2026年からは子ども・子育て支援金の徴収開始と、押さえるべき制度が増え続けています。

テレワーク、パパ育休、時短勤務など多様な働き方が当たり前になった今、これらの手続きをいかに正確かつ効率的に実行するかが、人事給与部門の重要な課題です。

人手不足、業務の複雑化、ミスのリスクに悩まれている企業様は、給与社保業務の専門家にお任せいただくことをお勧めします。当社では、こうした育児関連手続きを含む包括的な給与社保アウトソーシングで、企業の負担軽減と従業員満足度の向上をサポートしています。

ぜひお気軽にご相談ください。

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